レーベルHybrid Library主宰の弥生肇です。
突然の猛暑になってきましたね……体調管理、気をつけていきましょう!

さて、首題の件。
昨日なんとなくTwitterでつぶやいた下記ツイートに反響がありました。

 Kindle本の新刊やセールの紹介を精力的にやっておられる「きんどるどうでしょう」さんから「長文にまとめてみませんか?」という一言を頂いたりもしましたので、簡単にですがまとめてみます。

先に断っておきますが、私はやり手の出版業界人でも名の売れた作家でもなく、しがない書店バイトをやりながら、プロ作家目指していろんな書き物仕事や同人をしつつ生きている、元サラリーマンです。
強いて言えば、米国の某大企業相手にBtoBで海外営業をやってた経験が多少活きているのかも知れませんが、そんな私が個人的に感じていることをまとめてみたのが本記事になります。

というわけで、改めまして。
上記ツイートの前後につぶやいたことも含め、「どういう本が売れてる? どうすれば売れる?」のか、感じたままに下記してみます。

●どういう本が売れているのか/書店編

書店で仕事をしていると、その店で売れている本が何かは手に取るようにわかります。
販売データを覗けば言わずもがなですが、そんなことをしなくても、レジで仕事をしているだけでベストセラーはすぐわかります。あるいは、いろんなお客様から「あの本ない?」と問い合わせや予約が入るので、どんな本に注目が集まっているか知ることができるのです。
そんな私が感じている、どんな本が売れているのか?ですが……

(1)大多数の人は「著名な本」「売れている本」を買う
(2)店内で派手に紹介をしていたり、魅力的なPOPをつけている本が売れる
(3)表紙や帯が決め手になるのは、(1)や(2)の後の話

(1)大多数の人は「著名な本」「売れている本」を買う
ある意味当たり前ですが。
超有名どころだと、「東野圭吾」「宮部みゆき」のような著名な方々の本は、発売するなりドバドバ売れます。固定読者がついていて、名前を見ただけで買うような人がかなりいると思います。
そうすると、こういう方々の本はすぐ書店内のランキングに入ります。
加えて、出版社が目立つポスター等を渡してくれるので、陳列面でも強くなります。
というわけで、(1)はその文言通りの状態で売れ、さらに(2)の効果もあっという間に伴って、瞬く間に爆売れします。
そして、店内でお客様の動きを見ているとわかるのですが、ランキングをチェックする方がとても多い。レジに来る直前にランキングや話題書を見て、ついでに1~2冊手に取る人がたくさんいます。それが著名な作家の本ならなおさらです。だからレジ付近にランキングコーナーを作っている書店が多いかと思います。レジの机の脇に話題書や売れ筋コミックを置いたりもしますよね。
こんな感じで、著名な作家の本や、一度ランキング入りした本は、書店ではとても強いのです。

ここで言う「著名な」本に、少し補足をします。
お客様の問い合わせ対応をしていると、ある日突然、聞いたこともない作家の同じ本について同じ日に何度も尋ねられることがあります。電話でいろんな人に聞かれたりします。
「突然、なんじゃ!?」と思って調べると、ほぼ間違いなく、テレビの番組で取り上げられた本だったり、新聞や雑誌にでかでかと紹介コラムが載った本だったりするケースに該当します。
もう少し小規模な話だと、新聞の広告欄に本のタイトルと1行程度の紹介文だけ載ったような本も、お客様がその新聞を切り抜いて持ってきて、「これないか?」と尋ねてくるケースが多いです。こういう本は、問い合わせはそんなに多くないですが。
何を申し上げたいかというと、「テレビ」「新聞」の広告力はバカにできないということです。
私が働いてるような規模の書店なら日本に何千店舗もあるはずです。だから、そういうところで1冊ずつ売る程度の広告が打てれば、日本全体で、数千部の売上げ増を見込めるかも知れません。
まして、テレビ等で派手に取り上げれば……あっという間に書店から在庫が消え、増刷という事態になったりするのです。

(2)店内で派手に紹介をしていたり、魅力的なPOPをつけている本が売れる
よく書店に行って本を買っている方なら実感があるのではないでしょうか。
私もたまに、あてもなく本屋へ行って「なんかいいのないかな~」とうろうろします。
そういう時に手に取る本って、割と、書店でPOPがついているものではないでしょうか。やたらと凝った手書きPOPでゴリゴリに押されていると、つい中を見てみると思います
海のようにずらーっと並んでる本の中で、POPの力は想像以上に大きいと思います。
ちなみに、私が知人作家さんのサインを小さな色紙に書いてもらってPOPをつけて置いたことがあります。すると、その作家さんの本のそれまでの既刊の平均売上げ数に比べ、数倍の冊数が売れました。
これは各書店のボランティア的な働きかけによるところが大きいです。
ですが、出版社の営業部門が戦略的に、目を引くようなPOPを作って全国書店に配布すると……費用対効果がどんなものかはわかりませんが、面白いかも知れません。

(3)表紙や帯が決め手になるのは、(1)や(2)の後の話
知人から、「帯を見て買う本を決めることがある」という話を聞いたことがあります。
私も、贔屓にしている作家さんがコメントを書いてたりすると「おっ」と思うことがあります。
あるいは、表紙のデザインに目を奪われることもあるでしょう。
ですが個人的には、表紙や帯は結局「本の一部」になっていて、お客様の注意を引くには、飛び出した「本とは別の物体の状態」で目につくPOPに比べると弱いと感じています。
全部の本にPOPがついてなければ、表紙や帯が決め手になるかもですが。
よほど工夫した表紙でないと、全部同じ判型の文庫本がずらーっと並んでる場だったりすると、全部同じに見えて、お客様がすーっと通り過ぎてしまうかも知れません。
私が出版社営業、表紙や帯に凝る予算(の一部)で書店に配布するPOPを作ることができるなら、ある程度POPに賭けてみる気がします。営業さんにどの程度裁量があるのかわかりませんが。

というわけで。
結論というものでもないですが、書店でどういう本が売れているか。
著名な本やベストセラーが、売上げのかなりの率を占め、それらが更に売れる仕組みになっているのが現状です。
新人作家さんの本や隠れた名著が売れるのは、内容がいかによかろうと、簡単ではありません。

●どういう本が売れているのか/電子書籍編

では、上記の話を電子書籍に置き換えてみるとどうでしょうか。
Kindleや楽天Kobo、BOOK WALKER……様々なプラットフォームや販売サイトがあります。
どこも共通して、紙の書店以上に顕著に言えることがあるのですが……マイナーな本に光が当たりにくいです。
紙の書店なら、歩いているだけで全ての本が目に入ります。ですがネット書店では表示される本しか目に入りません。表示されるか、閲覧者が自主的にその本を表示させないと、絶対に売れません
また、仮に本が目に入っても。紙の書店ならぺらぺらっと眺めて見ることができます。好きなページを、あとがきを、著者近影を。ですが電子書籍だと、冒頭ちょこっとしか読めないのがほとんどです。個人的には著者の「あとがき」を最初に読んでニヤニヤするんですが、電書だとたぶんそれができる本はないです。

結果、電書では、紙の書店以上に(1)の傾向が加速します。売る方も売れる本をバンバン表示してきますし。ランキング表示機能がありますし。

(2)や(3)は、結局画面上での表示しかできないので、うま~く目立たせたりしないといけないでしょうね。

また、電子書籍で厄介(?)なのは、紙の本と違って再販制度がなく割引自由なので、無料本や割引本が溢れています。そういった形で客引きをできるのは、得てして大手か、利益を気にしない一部の個人出版がほとんどだと思います。
そうすると、それらに注目が集まる。
もっと言えば、「無料本をひたすら読み続ける」だけでずーっと過ごせてしまうくらいに、数だけは出ています。
「電子書籍を有料で売る」というのは、案外にハードルが高いのです。

ただ、こういった無料や割引、あるいは「とにかく目につかせることが大事」という点をうまく活用していけば、紙の本よりは、マイナーな本による逆転劇が可能な媒体でもあると思っています。

●少し脇道に逸れて――

私自身、同人電子書籍レーベルなるものを始めてみましたが。毎日、「どうすれば売れるんだ!?」と心で叫んでいます。
TwitterやFacebookで頑張って露出してみようと試みたりしています。
告知ツイートが50RTくらいされて、「へっへっへ、やったぜ」と思いながらKindleのレポートを眺めると、かろうじて1冊動いていた、とかそんな感じです。
他のKDPやっておられる方はもっとドバドバ売れてるのかもですが、私のHLはまだまだこんな感じです。
Facebookで何千円もかけて「電子書籍」に興味を持ってる方へ向けて有料広告を流しまくって、やっぱり50「イイネ!」とかもらって、「よしよし……」と思ってレポートを見ると、全く売れていない。HLのサイトのアクセス解析をみると、FBからサイトへ飛んできた人は片手で数える程しかいなかったりする。
案外、こんなもんです。

まーそれでも、これをやれば1~2冊動いたりするんです。結局はこれの積み重ねだと思っています。
そして、どこかで飛躍するタイミングがあるとすれば――上記の話に重なってきますが、「著名人の推薦」があれば、たぶん違ってくるんでしょう。極端な話、テレビで嵐なりAKBなりが「HLのこの電子書籍、面白すぎる!」とかやってくれれば、意味不明に売れるかも知れません。そうじゃなくても、有名な作家さんや書評サイトが取り上げてくれたりすれば、随分違うんじゃないでしょうか。
そこまで行かなくても、電子書籍制作の強い味方「電書ちゃん」が告知してくれたときは、少し違った効果がありました。HLの立ち上げ時の告知に早速協力してくれたのは本当に嬉しかったです。昨日、きんどうさんが私のツイートをRTしてくれたら、そこからの連鎖RTがぐぐーっと伸びました。
こういう、興味ある人たちにとって声の大きい人と上手く繋がっていくのが、大事なんだろうなと思います。

あと、これは電子書籍界隈では私とか、他に文学フリマ等で活動されてる一部の方だけしか実感がないかもですが、同人のイベント(コミケ、コミティア、文フリ等)に参加して、面と向かって読者と話し、作品をPRしていけば、それなりの効果はあります。私は二次創作で艦これの同人誌を書いたりしてますが、艦これオンリーでHLの宣伝も一緒にしたら、イベントのあとにちょこっとHLの本が動きます。
こういう、面と向かっての販促活動は、多少なりの効果があるでしょう。

●言い忘れましたが。

作品の中身がしっかりしているというのが、述べてきたこと全ての大前提にあると思いますけどね。笑
中身がないと、見てくれでの初撃だけはごまかしが聞いても、誰かのレビューや感想、書店員のPOPなんかはなかなか引き出せないでしょう。

というわけで、私も作家を名乗る一人なので。
良い本を書くべく、たゆまず己を研鑽していこうと思います。

本記事が、皆様のなにかのお役に立てれば幸いです。
あ、よかったら、Hybrid Libraryの本もためしに眺めてくださいませ。笑


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